フレイとダンス
<シチュエーション>
解呪の合間の、日常のひとコマ。
ダーデン(=『オレ』)が何気なく、宮殿を散歩していると、舞踏室で、教育係のフレイがお姫さまたちにダンスを教えているシーンに出くわす。
フレイはお姫さまたちにダンスの手本を示すため、いっしょに踊ってくれるように、ダーデンに頼むのだが………
………
| 【フレイ】 |
「アラアラ、そうですわ。ダーデンさま」 |
なにかを思いついたように、パチンと両手をあわせるフレイ。
| 【ダーデン】 |
「なんですか?」 |
| 【フレイ】 |
「わたくしとダンスを踊っていただけないかしら?」 |
| 【ダーデン】 |
「ダンスを?」 |
| 【フレイ】 |
「ええ。姫君さまに教えるにあたって、実際のダンスがどのようなものか見せてさしあげたいの。だけど、今日にかぎって、わたくしとダンスを踊ってくださる殿方が見つからなくて、困っていましたの」 |
どうやらお姫さまの、ダンスの見本になれということらしい。
| 【ダーデン】 |
「ダンスなんて踊ったことない」 |
| 【フレイ】 |
「それでも構いません。わたくしがリードしますから、ダーデンさまはそれにしたがっていただくだけで」 |
| 【ダーデン】 |
「でも………」 |
| 【セルシア】 |
「つべこべ言わずに、さっさと踊ってみせなさいよぉ」 |
セルシアが口をはさむ。
| 【ダーデン】 |
「イヤだ」 |
| 【セルシア】 |
「そう。じゃ、踊らないなら、さっさとココから出て行きなさいよ。練習のジャマになるでしょ」 |
| 【ダーデン】 |
「やっぱり、やります」 |
| 【フレイ】 |
「まぁ、ありがとうございます」 |
| 【セルシア】 |
「一体、どっちなのよ!」 |
| 【ダーデン】 |
「ズブの素人なので、お手柔らかに」 |
| 【フレイ】 |
「フフ、任せてください」 |
フレイがソッとさしだした手をとるオレ。
| 【リネア】 |
「が、がんばってくださいね」 |
| 【ダーデン】 |
「ありがとう。リネア姫」 |
| 【セルシア】 |
「イー!」 |
| 【ダーデン】 |
「………」 |
セルシアにますます嫌われてしまった。
(あの、お姫さまの相手をすると、ついムキになってしまう。どうしてだろう………?)
| 【フレイ】 |
「それでは、いきますよ?」 |
| 【ダーデン】 |
「ハ、ハイ!」 |
フレイが目で合図を送ると、女官がピアノを弾きはじめた。
ゆるやかな舞踏曲だ。
フレイが気をつかって、初心者のオレにも踊りやすい曲をチョイスしてくれたのだろうか?

| 【フレイ】 |
「………そう、それでいいですよ。そんな感じですよ」 |
それとも、フレイのリードが達者なのだろうか? ともかく、2人はそれなりにちゃんとダンスして見せた。
| 【フレイ】 |
「左ひざの動きがちょっと固いですよ。もっと柔らかくして」 |
| 【ダーデン】 |
「あ、ハイ。すいません」 |
| 【フレイ】 |
「いいえ、リラックスしてダンスしてください………ウフフ」 |
フレイはかすかに目をほそめて、ほほえんでいる。オレの目をのぞきこむようにして。
彼女の瞳のなかに、やや緊張気味のオレの表情しか映らないほど、接近している。
香水をつけているのだろうか? フレイの身体からフンワリ漂ってくる、薔薇の香りがほのかに鼻をくすぐる。
(やっぱり、美しい女性だ………)
そんな他愛のことを考えつつ、なかば夢心地で、ダンスを踊るオレ。
気がついた時にはピアノは鳴り止んでいた。
………